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「介護×IT」の新規事業開発に挑んだチームが、チャレンジから得た経験や学びとは?【スタートアップスタジオ通信 特別編】

お疲れ様です!Super Stories 編集部の大崎です。

Super Storiesの連載企画「スタートアップスタジオ通信」では、Supershipグループにおける「新規事業の同時多発的な立ち上げ・運営」を行うために設立された組織「Supership Group Startup Studio」(略称:SSGSS)の活動を報告しています。

今回の記事はその特別編として、昨年度の新規事業創出プログラム「ミライリアルCHALLENGE TRYOUT 2022」に挑戦したプロジェクト「ケアカレ」のメンバーの皆さんへのインタビューをお送りします。

「ケアカレ」は、「ミライリアルCHALLENGE TRYOUT 2022」のピッチ大会を通過し、事業化に向けたMVP(Minimum Viable Product=製品やサービスの仮説検証を行うために制作する、最小限の機能を備えたプロダクト)の開発や営業活動などを行ってきましたが、今年5月にプロジェクトを終了する決断をしました。

「ケアカレ」プロジェクトの推進から得た学び、そして新規事業開発への思いはどういったものなのかを聞きました。

【「ミライリアルCHALLENGE TRYOUT 2022」については以下の記事もご参照ください】

「ケアカレ」チームの DATUM STUDIO Takahiro.Iさん(左)、Supership 中根さん(中)、Supership 北村さん(右)

(※以下敬称略)


介護業界における課題を解決するマッチングプラットフォーム

―今回の取り組みについて、まず「ケアカレ」というプロジェクトはどういったものなのか、リーダーの中根さんよりご説明いただいてもよろしいでしょうか。

Supership プロダクト開発本部 中根さん

中根「『ケア』という単語が入っていることからもわかるように、福祉や介護に関する事業にチャレンジしていました。介護を受けられる利用者の方々や、その方々をサポートするケアマネージャー、そしてデイサービスといった事業者など、ステークホルダー間の日程調整や、どこの介護施設が利用者のニーズに適しているのかというマッチングがアナログで行われているという現状が介護業界にはあり、その課題を解決できるマッチングプラットフォームを作れないかということで進めていたプロジェクトです。

このプロジェクトは、自分の母や姉が介護業界に関わる仕事をしていたことから着想を得ました。介護の現場におけるニーズや課題はないかとヒアリングをしていた中で、そういった部分(日程調整など)にかなりの時間を取られていることや、そのコストを削減できればもっと従業員に賃金として還元できるのではないかといった話が出てきました」

―この「ミライリアルCHALLENGE」に挑む上での最初の関門がピッチ大会であったと思いますが、そこまでにはどういった準備を進めてこられましたか?

中根「まずチームの中で毎週一人ひとりがアイデアを持ち寄って話し合う、という形で始まりました。最初の方は今流行っている技術といったところから着想を得たアイデアが多かったのですが、協議と検討を重ねていく中で、事業化に向けては技術からのアプローチよりも世の中の人たちが困っていることを解消するというアプローチの方が良いのではないか、という話になり、そこで出てきたのが『ケアカレ』のもとになったアイデアでした。そこから実際に困っている人たちがどれくらいいるのかなどを市場調査を進めつつ、プレゼン資料を作って最終的にピッチ大会に挑んだ形です」

―ピッチ大会を通過された時の気持ち、そしてそこから取り組んだことはどういったものでしたか。

中根「まずは喜びが大きかったです。そしてすぐに事業化に向け、どういった体制でどう時間を使っていくかを考えました。

次の段階としてはMVPを作ることになるのですが、その前段階として、必要とされる条件や機能といった要件定義をするためのヒアリングを有識者の皆さんや自分の家族に行いました。それらを通じて情報整理をして、MVPの開発へと進んでいきました。

今回は介護業界ということで、利用者の方も関わっている方も年齢層が比較的高く、課題をWebサービスで解決するということへの感度が高くはなかったので、そこでの説明や理解いただくということのハードルは若干高かったなとは感じました。また、同じ業界であっても訪問介護とデイサービスの場合で課題感が実は違うなど、新たな発見もありました」

“インターネット”への理解を高めることに苦心

―チームの役割分担として、中根さんがリーダーとしてプロジェクトの進捗管理を、そしてTakahiro.Iさんが営業活動やその戦略立案、北村さんが開発に主に従事されていたということですが、Takahiro.Iさんは営業を行っていく中でどんなことを感じられましたか?

DATUM STUDIO データアナリティクス本部 Takahiro.Iさん

Takahiro.I「そもそも“市場で必要とされていないプロダクト”を作っているのではないか?という課題感のズレを感じたりしました。 今回まずはテレアポを中心に営業活動を行っていたのですが話をほとんど聞いてもらえず、その後対面での飛び込み営業に切り替えました。話は聞いてもらえたもののそれでおしまい、というケースが多かったです。

私自身はエンジニアで、営業活動は初めての経験だったのですが、テレアポにせよ飛び込み営業にせよ、慣れてしまえば大丈夫だなと思いました。ただやはり、スマホではなくガラケーを使っている方もいらっしゃったので、インターネットに対する理解を高めるのに苦労しました。もちろんインターネットを日常的に使われている方も多いのですが、それを業務で使っているかはまた違う話です。私は開発にも携わっていたのですが、そうした状況がある中ではUIの工夫にも限界があるなとも感じました」

―開発を中心に手掛けられた北村さんにお聞きしますが、難しいと感じられた点はありましたか。

Supership プロダクト開発本部 北村さん

北村「介護業界を知るために、まずは厚生労働省のホームページを見たりなど、事実に基づく客観的な情報を集めました。ただその後Takahiro.Iさんと一緒に介護事業者の方に話を聞きに行ったりすると、リテラシーや課題感について私たちの想定とかなり異なっていたところもありました。そのギャップを後から埋めていくのが難しかったです。

行政機関が掲示している情報には自分たちの声は届いていない、この(厚生労働省が示している)方向性じゃ絶対うまくいかない、という声も現場から聞かれました」

Takahiro.I「業界全体の大きな課題感として、とにかく『働き手がいない』ことを何とかしなくてはいけなくて、お金を割くならばそちらに割きたいという印象を受けました」

―そうした声を受けてのプロジェクトのピボットなどは考えられなかったのでしょうか。

中根「それについては『ここまでには決断しよう』というタイムラインを明確に定めていたのですが、プロダクトの方向性の転換というところまでは、時間やリソースが十分に割けなかったこともあり、最終的には辿り着けませんでした。もともとのケアカレについても、いくつかの事業者さんからはお声がけをいただいていたので、一定のニーズはあると感じていたのですが、設定していたKPIには届いていないという判断になりました。

また、今回の『ミライリアルCHALLENGE』におけるタイムラインと、私たちがやろうとしていたことの規模感やかかる時間が合わなかったとも考えています。すでにある程度使えるWebサービス自体は開発できているので、それを使って営業活動や認知を広げる行動を取って市場に浸透していくのを見ようという声もあったのですが、やはりKPIに達していないということもあり、終了する判断に至りました」

Takahiro.I「あのまま営業を続けていれば事業化の可能性もあったと思いますが、いずれにせよDXの推進にはかなり時間がかかる業界だと感じましたし、それを会社の事業としてやり続けるのはどうなのかというところで、終わりとなったと考えています。

営業は、高齢者人口や事業者の多さ、時間的にコンパクトに訪問できるなどの点を鑑みて杉並区・世田谷区を中心に行っていたのですが、テレアポと飛び込み合わせて400〜500件アタックして、話を聞いてもらえたのが1%くらいという感覚です。お時間をいただいた事業者の方々においては、稼働率を上げたいというニーズもあるし、まあ無料なら、ということで使ってもらえることになっていたのですが、プロジェクト終了を告げたところ『残念ですが、難しいですよね』という反応でした。先にも述べたように働き手不足で手一杯なところも多かったので、そこはミスマッチだったかなと思います」

飛び込み営業に向かう北村さんとTakahiro.Iさん

新規事業開発を通じて得た学びとは?

―今回の取り組みを通じて、これは十分やりきったと思うこと、反対にもっとできたのではないかと思うことはありますか?

中根「十分やりきったところで言うと、アイデア出しからMVPまで、新規事業開発をゼロから経験できたのは私としても初めてで、何もない状態からヒアリングして、自社のリソースを使ってどうやって課題解決ができるかを考えるのはとても新鮮な体験で、熱を込めてやれた部分だったと思っています。

一方で、営業をかけていく段階のときに、自分の業務で課題が積み重なっている状況で、ケアカレの方に時間やリソースを割けずにかなり迷惑をかけてしまったなという悔いがあります。この『ミライリアルCHALLENGE』は会社のリソースを使って新規事業開発ができるというところに私たち社員にとってのメリットがあると思いますが、元々の業務とのバランスは、ハンドリングが難しい点だったなと感じます。もちろん、組織上兼務とすることやタスク配分の考慮など、かなりサポートいただいたのですが、どうしても自分が対応しなければいけない局面はあるので、そこは大変でした。この点については事前にしっかり準備をしておくべきだったと思います」

北村「私はエンジニアなのですが、Takahiro.IさんやミライリアルCHALLENGE事務局の皆さんと一緒に飛び込み営業やテレアポといった経験をさせてもらったので、気持ちとしてはもうそこでだいぶ完全燃焼できた感覚があります。また、結果的には終了ということになりましたが、しっかりと段取りを踏んで順番に積み上げていった結果なので、これは仕方ないかなとも感じています。

反対にもっとできたと思う部分では、中根さんと重複しますが既存の業務とのバランスですね。また、自分自身のモチベーションとしても、この取り組みをやりきって何を得られるのかというところまで具体的に想像できていれば、より高めることができていたのではないか、と思います」

Takahiro.I「やりきれた部分で言うと、サービスはしっかりと作ることができた点です。ノーコードでの開発ではありましたが、アプリまで作れたのは、これまで経験できなかったことでした。

一方で、営業に従事されている方は皆さん感じていることかもしれませんが、営業活動については『もっとできたのではないか』『提案をもっと工夫していれば、案件化できたのではないか』という思いがあります。こんな大変な思いをしながら営業しているんだなと思うと、本当に尊敬できます」

―その他に、得られた学びなどはありますでしょうか。

Takahiro.I「新規事業を作るにあたって、こういった進め方をするんだ、という過程に関して稲葉さんなどさまざまな方からレクチャーを受けながら進めることができたので、その点が最も勉強になりました。また、まっさらな状態からサービスを一つ作り上げることができたという点で『こんな“ちゃらんぽらん”な自分でもやればできるんだ』という自信につながりました」

北村「新規事業の進め方においては、これまでに経験したことがなかったので、全てが学びになりました。また、ディレクター職の方などと一緒に、やったことがない営業活動にも取り組んだりと普段とは違った動きができたので、他の皆さんの仕事も“ジブンゴト化”して考えられるようになったのではないかと思います」

中根「私はこのSupershipに新卒で入社して、新規事業については入社2年目に入ったぐらいから構想を始めて、結果として1年ほどこのプロジェクトに関わらせていただきました。『すでにあるプロダクトに機能を追加する』とか『過去の経緯を調べつつ、ご要望も聞く』などといった仕事が普段は多いところ、今回はまっさらな状態から、どんな価値が生み出せるか、そのためにはどういった技術的要素が必要なのか調べ尽くしたりと、ゼロから仕事に取り組めたのが大きな経験になったと思います。

ホワイトボードを前にディスカッションを重ねるTakahiro.Iさんと中根さん

その過程で家族からもフィードバックをたくさんもらって、協力してもらいながら進めていたのですが、それを通じて、実際に困っている方々の課題を生活者の目線から何の制約もなく考えることができたことも意義深い体験でした。それをアイデアに昇華させて、チームで共有しているときはとても楽しいのですが、実際に現場でヒアリングをするとなかなか思い描いていた反応は得られませんでした。こういった壁にぶつかることは、起業をされた方は必ず経験されることだと思うので、それを感じることができたのも良かったと思います。

現在の仕事においても、新機能などを考える際に、自分の中で『こういうメリットがあるからこれは良いだろう』と思っていても『これは自分の中で完結してしまっているから、この段階で早めにフィードバックをもらって修正した方がいいな』と考えられるようになりました」

やる気がある人には、まずは“腕試し”感覚でチャレンジしてほしい

―今後も、このような新規事業開発にチャレンジしてみたいと思いますか?

中根「チャレンジしたいです。またやるとしたら、ある程度実情を知っている業界でやってみたいという気持ちは正直ありますが、自分が何かしらの仮説を立てて、それが当たったらとても楽しいし、当たらなかったとしても、また考えて修正するというプロセスは楽しいと今回実感しました。仕事のやり方として、決められたことをどんどんこなしていくのもそれはそれで楽しいことですが、何の制約もないところから作っていって、だんだん制約ができてきて、最終的な妥協点を見つけてお客さまに使っていただく形となるという一連の流れを経験できたのは良かったです」

北村「新規事業開発にはまたチャレンジしてみたいですが、『ミライリアルCHALLENGE』ではない形が良いと思っています。理由としては、今回の取り組みで新規事業の進め方などを自分はある程度学べたので、今度は外から、“他の人たちだったらどんなことを学んでどんなものを作っていくのかを見てみたい”という思いがあるからです。この枠組みを使った機会は他の方にも活用いただいて、自分はまた別のやり方でできればと思います」

Takahiro.I「新規事業開発に限らず、新しいビジネスに取り組むことは今後も引き続きやっていきたいですが、それが『ミライリアルCHALLENGE』になるかは、自分の考えたアイデア次第だなと思っています。会社のリソースを使った方が良いのであればそうすべきですし、自分でできることであれば自分でやってしまった方が良いなと。資金などのサポートがあるのはメリットですがその反面、どうしても会社の取り組みとして期限が決められていることはビジネスとして正しくも、新規事業開発という側面から考えるともう少し時間が欲しいと今回の取り組みで強く感じました」

―Supershipグループでは、今後も新規事業開発を支援するプロジェクトを継続していきたいと考えています。最後に、グループ内で新規事業開発にチャレンジしたいと思っている皆さんへのメッセージをお聞きできればと思います。

Takahiro.I「個人的には、やった方がいいと思います。新規事業開発のプロセスなどは既存業務でも活かせる部分はありますし、もし新規事業が成功すれば自分の市場価値も爆上がりすると思います。私はSupershipではなくDATUM STUDIOの社員ですが、Supershipの皆さんと関わりができ、つながりが広がって良かったです。もちろんちゅらデータやMomentumの皆さんにも、機会があれば応募してほしいなと思います」

北村「色々なことが学べますし、スタートアップスタジオの方々もとても優秀ですので、ぜひ挑戦してみてほしいです。ここで学べることは既存業務はもちろんのこと、日々の生活やこれからの人生といったことにも活かせると思っています」

中根「『ミライリアルCHALLENGE』は、新卒の皆さんのなかにも注目している方も多いかと思います。そういった意味で、新卒や若手の方々に向けて言うと、既存業務を通じて満たせる欲求はあるものの、実際にゼロイチで物事を考えてみたいとか、自分の力を確かめてみたいといった欲求を満たすのには、最適のプログラムになっているので、腕試しをしてみてほしいと思います。サポートもかなりしていただけますし、やっているうちにアイデアが浮かんでくることもあると思います。

一回本気でそういうことに取り組んでみると、それに伴い必要なスキルも磨かれていきますし、座学で学ぶだけではなく実際にやってみる方が、結果的に全般的なスキルが身についたと感じると思うので、ぜひやる気のある方にお勧めしたいですね」

取材へのご協力、ありがとうございました!

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