
一人ひとりが“自律的に”動く組織を目指し、会社も人も常に改善を重ねる【Leader's ミライリアル 宇都宮さんの場合】
お疲れ様です!Super Stories編集部の大崎です。
Supershipグループでは、Group Purpose「ミライリアルの幸せを、デジタルの力で創る」の浸透に向けた取り組みを進めています。その一環で現在、グループの全従業員を対象としたワークショップ "CAMP” を順次実施しています。 "CAMP” ではメンバー一人ひとりの「ミライリアル」を言語化していますが、この連載「Leader’s ミライリアル ◯◯の場合」では、グループのマネジメント陣が掲げる「私のミライリアル」とその背景にある「価値観、好きなこと、得意なこと」をお届けします。
今回は、Supership CTO 宇都宮 紀陽の「Leader’s ミライリアル」です。
Supershipグループを牽引するマネジメント陣が考える、各社・各事業の“未来予想図”である「私のミライリアル」にぜひ触れてもらい、日々の業務(=旅路)を進めるヒントとしてご覧ください。
【 カルチャー浸透施策のひとつ、「カルチャーブック」については以下の記事で制作意図などを語っています。ぜひこちらも合わせてお読みください 】
宇都宮さんの「私のミライリアル」

「私のミライリアル」
上場企業として必要な統制、秩序を社員が自律的に実践できる
組織風土と企業文化を構築する
―宇都宮さんの「私のミライリアル」にはどのような思いが込められていますか。
「今のところ、短期的な視点ではこのように言えると思います。企業文化は局面ごとに変わっていっても良いですが、組織風土は不変であるべきで、パーパスなどにも関係してくると思います。これをしっかりと構築し、社員の皆さんが自律的に実践してもらえるようにしていきたい。私はCTOという立場ですが、エンジニアやデータサイエンティストのみならず、ビジネスサイドの皆さんにもこういった考えを持ってほしいと思っています。
もう少し長期的な視点、上位概念で言うと、皆が同じ思考とはいかないと思いますが、同じ情報・概念を共有できるようにしたいと思っています。今はまだまだ色々と“カオス”な状況ですね。私は前職のヤフーで検索事業の開発を手掛けていたのですが、なぜそれをやりたかったのかと言うと、自分が学生の時はインターネットを民間人が自由に使えることができず、もし自由に調べることができたらもっと戦略的に受験校を選んだり勉強のやり方も違ったかもしれない、という想いがベースにありました。都会と地方で情報格差があり、一部の人だけが得をするということも無くしたいと考えていました。
Supershipでも、情報を的確に流通させたいということは常に考えています。情報発信の方法が良くないのか、組織構造に課題があるのかなど、ボトルネックになりうる部分はいくつもあります。一口に情報を伝えると言っても、相手の脳みそまで到達させないと伝わったことになりません。Slackでアナウンスしただけだと本当に伝わっているかはわからないですよね。それをいかにして伝えるかを組織風土、企業文化として作らなければいけないと思っています。
リモートワークが中心になり、顔を合わせて話し合う機会も極端に減ったので、これはCTOとして向き合わなければいけない課題として捉えています。これを解消したらSupershipグループはもっと伸びるポテンシャルしか無いと思っています」
価値観・好きなこと・得意なことについて
―続いて、その背景にあるご自身の価値観や好きなこと、得意なことについてお聞きします。ご自身の価値観は「家族」「体力」「責任」の3つを挙げられていますね。
「これまでの人生で大切な価値観がずっと蓄積されてきた、というよりかは子どもが生まれてパラダイムシフトが起こりました。『家族』を守る立場になったため、どうあがいてもこの価値観は上がってきます。
『体力』は、これが無いと何もできないので、そこは気をつけています。なんというか、皆さんケアを一切しないわけでは無いですが、自分の身体の改善にあまり向き合っていないような気がします。自堕落だけど仕事だけは真面目、とか。逆に言えば切り替えができているのだと思いますが、私は新卒で入社した会社でめちゃくちゃな働き方をして体を壊したので人一倍心身のケアが大事だと思っています。
『責任』は、家族を守る責任もそうですが、CTOという責任のある立場において、途中で逃げるという選択肢がありません。仕事を任されたら完遂したいという思いも自分はとても強いです。『立つ鳥跡を濁さず』の考え方が本当に大事だと思っていて、辞める時や引継ぎ時に色々散らかしたままで残された人が大変、ということが本当に嫌いなんですよね。前職を辞める際も、退職の1年前に『後任を見つけ育成し、後任が一人前になるまで辞めない』と周囲に宣言し、実際に任せられるようになるまでは辞めませんでした」
―お話を伺っていて、Supershipグループにおける家庭と仕事を大事にする風土は、宇都宮さんの発信のおかげでできているな、と感じました。
「そこはちゃんと採用に響いてくれたら良いなと思いつつ発信しています。人事の皆さんもとても頑張って仕事と育児を両立しやすい体制づくりに励んでくれていますし、メンバーもそれを理解して協力してくれる雰囲気があるのは素晴らしいと思っています。
ただ、残念ながらそれが社外に対してあまりアピールしきれていないと感じるので、もっと打ち出していったほうが絶対に良いと思っています。何かしら社内外に価値がありそうなことは出し惜しみせずにドンドン出していったほうが良いです。会社のブランディングにもつながりますしね」
※編注:Super Storiesでも、働くママ・パパに経験談を聞いたインタビューなど、働きやすさの向上に向けた情報発信を行っています。宇都宮さんも参加された座談会の様子を以下リンクからお読みいただけます
―好きなことは「金儲け」「インターネット」「家族と一緒に過ごすこと」とありますね。
「誤解を恐れずに言いますが、基本的に私は金儲けが大好きなんですよ。金儲けといっても、投機的に一気にキャッシュを得るのではなく、いかに自分の仕事や事業を通じて金儲けができるか、ということです。それがその事業の価値になるのだと思っています。『売上は価値の総和、利益は工夫の総和』は良い言葉だとずっと感じていて、新しいサービスがいかに世の中のニーズをキャッチできて金儲けできるかをずっと考えています。
また、これは個人的な考えですがインターネットジャンキーじゃないとこういう仕事はしてはいけないとすら思っています。日々の仕事は大変なので、家だとあまりネットに触りたくないと考える人も多いとは思うのですが、やはりインターネットの仕事に携わっているのであれば日頃から慣れ親しんでおくべきではないか、と。どこにビジネスチャンスが転がってるかわかりませんからね。
自分自身はインターネットジャンキーですし、インターネットに救われた人間なので、常にそこにいたいです。そうでなければ自分のアイデンティティも今とは違ったと思います。家族に呆れられるぐらいずっとスマホは手放せなくて、骨折して入院中に全身麻酔から開放されたときも、まずやったのはスマホの電源を入れたことでした(笑)。
家族と過ごすことについては、2020年2月頃にCTOになってほしいと稲葉さん(Supershipホールディングス代表)から打診されて、子どもが生まれたばかりで迷っていました。ですが、ちょうどその頃コロナ禍に入り在宅ワーク中心になったため、育児にも時間を割くことができるちょうど良いタイミングとなったので、これならばCTOとしての職務と両立できそうだと感じ、引き受けました。家族と過ごす時間も増え、良かったなと感じています」
―得意なことは「状況に影響を与える可能性要素を全て考慮に入れて行動すること」「決定や選択を行う際細心の注意を払うこと」「目標を定め達成に向け必要な修正をしながら邁進すること」の3点を挙げていただきました。
「これらは以前に『ストレングスファインダー』(※編注:アメリカのギャラップ社が開発した、人の強みや資質を見つけ出すためのツール)を使って出てきたもので、自分自身もこのとおりだなと思ったためここにも書きました。状況に影響を与える可能性、何かしらまずいことが起こる要素が無いかを全て洗い出して、そのうえで瞬時に行動するということは常に心がけています。そのため自分が見ている領域では、あまり失敗は無かったと思います。
その上で、意思決定や選択をする際に、『こうしたらエンジニアとの間にハレーションが起きてしまわないだろうか』ということには注意を払ったり、リサーチしたりしています。Slackで探ったり、『CxO's Cafe』という生配信の企画を行ったり、エンジニアと個別に話したりもしています。それでも相容れなかったらそれは仕方ありませんが、とにかく慎重に物事の決断を進めるようにしています。なぜなら、人の人生を左右してしまうことになりかねないからです。
どうしても会社という組織にいる以上仕方がない側面はあると思いますが、経営者は数百人、場合によっては数千~数万人の従業員の人生を預かっているわけですから、人の人生を弄ぶことは絶対にしてはいけないと思っています」
価値観が育まれた人生のターニングポイントは

―続いて、宇都宮さんの価値観や好きなこと・得意なことが育まれるきっかけとなったエピソードを伺いたいと思います。ご自身の人生の“幸福度の増減”を折れ線グラフにした「ライフチャート」に沿ってお話を聞いていきます。
新卒で入社し、SIとして働いた1社目はかなりの激務で、通勤電車で倒れたりしたこともあるなどとても大変だったようですね。
「当時は仕事がキリが無いぐらいあって、他のことを考える余裕がありませんでした。時代的にも『IT革命』という言葉が叫ばれだした頃でしたが、社員の負荷はどんどん上がっていました。私自身も売上が全てを癒すと言うけど、全然癒やされないじゃんと思っていました。
何が悪かったかというと、社員みんながバラバラで、経営陣は売上を達成する以外のコンセプトは持っておらず、社員のことなんかどうでもいいという態度を私たちが感じ取ってしまうことでした。それは絶対に良くないという教訓(アンチパターン)が得られたというのは唯一良かったところですね」
―その後、知人の紹介でヤフーに転職されました。
「新卒で入社した会社ではスーツを着て出社していたのですが、ヤフーはスーツでなくてもOKで、全く文化が違いました。アメリカの、本当のスタートアップ企業の文化とはこうなんだ、というのを身を持って感じましたね。
ヤフーでは3年おきに社内で部門を異動できる制度がありました。それを用いてデータエンジニアとしてデータマイニングに従事したあと、情報システム部門で社内向けアプリケーションを開発し、その後やっぱりサービスに携わりたいと検索事業に行きました。そこではアメリカのヤフー本社のシステムをローカライズする立場だったりもしたので、本国に何回か出張に行かせてもらったり、とても楽しかったですね。
また、検索エンジンをGoogleのものに切り替える作業に携わったのですが、社内メンバー2人だけで完遂しました。これは未だに私の自慢の仕事ですし、本当に良い経験をさせてもらいました。また、エンジニアのキャリアとしても、検索エンジンを開発できる人材は一握りで希少価値もとても高いので、自分自身のブランディングとして生かしていく生存戦略にも繋がっています」
―「生存戦略」という言葉についてもう少し詳しく聞かせていただけますでしょうか。
「サラリーマンとして働いていると、どうしても周囲の考えや行動に流されてしまうことがあります。上に言われたことをこなすのが自分の仕事、という考え方も当然ありますが、そうするとなかなか自分のバリューを高められず、結果給料も上がりづらい。自分は頑張ってるのに…という不満がたまる、という負のループに陥りがちです。
これは自分自身、外の世界に出てみなければわからなかったことなのですが、自分で自律的に動かないとそこは改善されないんですよね。会社として売上や利益の目標がある時に、自分は何をしなければならないのかを現場のメンバーも即座に考えられないと、バリューも発揮できないしスキルも向上していきません。
世の中は変化し続けるので、自分たちも成長してようやくどっこいどっこいになる。いちエンジニアとしてこの先のキャリアを考えた時に、採用する側で同じようなスキルの人が並んだ際の最終的な決め手は結局『希望年収ができるだけ低くて、できるだけ若い人』となってしまう傾向が今の日本ではまだ根強いので、そうなると皆が使える技術の他に活用できそうな“希少性の高いナレッジ”などを持っておくことが大事、というのは皆さん知っておいたほうがいいと思います」
―そして、ScaleOut社(現在のSupershipの前身となる会社のひとつ)に転職されます。創業者の山崎さんはヤフー時代の知り合いだったんですよね。
「ある日、ScaleOutがmediba(※編注:Supershipグループと同じくKDDI子会社で、auスマートパスなどのサービス運営を主に手掛ける)に買収された記事がTechCrunchに出ていて、大朝さん(現・Supership代表)と山崎さんが一緒に写っている写真を拝見したことをきっかけに山崎さんにコンタクトをとったら『ちょっと遊びに来なよ』と言われたので会いに行きました。
その時は今のアドテクの基礎、RTBなどについてあまり詳しく追っていなかったので、そのあたりについて知りたいと思って行ったのですが、『うちで検索事業をやらないか』と言われました。その時のヤフーは内製システムで検索エンジンを作っていましたが、外のオープンソースの力でどこまで同じような品質のものを作れるのかに興味があったので、そういったことをやってみたい、ということで転職を決めました。
とはいえ、最初は受託のみの事業だったためそこから横展開を考えないと広がっていかないと入社した時から考えていました。その時の検索事業はまだSupershipを支える主力事業ではなく、違うビルにいた(※編注:Supershipグループは以前、表参道・骨董通りの複数のビルにオフィスを構えていた)こともあり、“ステルス戦略”と言いますか、自分たちがやっていることにあまり目くじらも立てられないだろうと独自路線で進めていました。そうすると利益がどんどん積み上がっていって、KDDIグループ内から検索エンジンのリプレイスを進めていくことができ、やがて外部のECサイトにも提供できるようになるなど、今の『S4』を形作ることができました」
―その後、お母様を亡くされたことによりグラフは急落しますが、お子様の誕生により持ち直しています。現在は子育てと両立しながら前述の「私のミライリアル」を実現するためにご尽力されていますが、CTOとして、Supershipは今後どのような組織になっていくと良いと思われますか?
「Supershipが参考にすべきは、私もずっと応援している世界最強のサッカーチームで、イギリス・プレミアリーグの『リバプールFC』だと思っています。チームの監督は、90分間の試合の戦略は事前に立てることができますが、サッカーは1秒単位で局面が変わるので、結局は現場、試合に出ている選手が局面を打開しなければいけません。だからこそ、リバプールでは脳を鍛えるトレーニングにかなり力を入れているのですが、それでも負ける時は負けるので、改善もどんどん重ねていきます。
そういった部分に興味があるので、私自身も世の中の論文や記事をよくチェックしていますし、Supershipに当てはめられる部分はないかと考えています。計画を立てることのみならず、それを意識的に達成するために、ピリオタイゼーション(どのタイミングにピークを持っていくかを考えること)をするべきで、そのためにどういった行動を取るべきかを逆算する必要があります。これについては取締役はもちろん考えるべきですし、執行役員も、事業部長も、最終的にはメンバーにまでその考え方を浸透させていかなければいけない。なぜならそれこそがリバプールの成功の理由だといえるからです。
成功しているIT企業を真似して成功するのであれば、どの会社も必然的に成功しているはずなので、違うところに目を向けたほうがいいのかなと思っています。さまざまな組織の成功事例を見て、自分たちが直面している課題に似ていることがあるのならばそれをある程度転用すれば活用できるのではないか、もしダメならまた次のことやれば良いし、などといつも考えていますね。子育て優先になりますけど(笑)」
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